Watch Person Interview vol.61 ペキニエ最高経営責任者 ローラン・カッツ インタビュー
東京のショップ視察で再認識した
挑戦者としてのペキニエ
久々に復活したフレンチ・マニュファクチュールのペキニエ。その最高経営責任者(CEO)のローラン・カッツ氏が来日。久々に東京で再会し、話を伺った。
「今回の来日の目的は、日本のマーケットを理解するため。そして、もうひとつは我々の日本におけるディストリビューターである『カリブル21(ヴァンテアン)』をサポートするためでもあります。
このような視察旅行を定期的に行っているのは、それぞれの国で、ざまざまな要望があるため、それにできるだけ対応し、現地のディストリビューターと連携していくためです。
同時に、どんな商品がその市場に合っているのか、これを調べるためでもあります」
今回の来日で、カッツ氏は都内数軒のウォッチ・ショップを視察したという。どちらに訪問したのだろうか?
「今回、私は池袋の西武百貨店、日本橋の高島屋ウォッチメゾン、新宿の伊勢丹メンズ館などを訪ねましたが、日本のショップは、たとえばスイス・ローザンヌのショップと比べても、非常にレベルが高いですね。展示されている時計の数も、スイスやフランスに比べると格段に多いようです。
もちろん、スイスやフランスにも素晴らしいショップはありますが、それほど多くはありません。しかし東京には、時計が豊富で雰囲気の良い店がたくさんあります」
これらのショップを訪ねて、カッツ氏はどんな感想を抱いたのだろうか?
「このショップにおいては、我々が挑戦者であることを再認識しました。もちろん品質も仕上げも機能も、他のブランドと同等のレベルにあると。
ただし、大きなブランドのようにプロモーションに湯水のごとくお金を注ぎ込むことはできません。我々のような小さな会社は、ショップのスタッフをトレーニングし、商品の良さを顧客にアピールしてもらって、理解していただくしかないのです。
その点でも、ペキニエ・マニュファクチュールが生み出すムーブメントは、非常に優れており、イノベーティブ(革新的)であり、価格以上の品質を持っていると自負しています」
マニア好みブランドから脱するための
ペキニエ・マニュファクチュールの戦略
自らが挑戦者であることを再認識したという東京のショップ視察。では、そこでペキニエはどんな戦略で挑んでいくのだろうか?
「ペキニエの利点は、消費者に対して新たな選択肢を与えられることです。そして私はこのことこそ仕事の喜びだと感じています。
我々は生粋のフレンチ・マニュファクチュールであり、独立した会社なので、他社とは違うアプローチでの開発を行えることがメリットです。大胆な改革を実行しやすい環境にあるともいえるでしょう。
とはいえ多くの人々が、どうしても知名度のあるブランドに惹かれてしまうのは日本だけでなく、他の国でも同じです。これを、どうしたら我々のような新しくて小さなブランドに目を向けてもらえるか、ということの解決方法は、なかなか見つかりません。ただし、その最善の方法が顧客同士のリレーションシップ、つまり“クチコミ”を使うことではないでしょうか。
そのクチコミのもとになる情報を小売店から発信し、これに興味を示し共感する人々を見出していければ、と期待しています」
カッツ氏がいうように、時計愛好家の間ではペキニエ・マニュファクチュールの品質や特色がジワジワと語られ始めるようになり、そのクォリティの高さと価格の手ごろさが話題になることも少なくない。
ただ、それだけでは“マニア好みの隠れたブランド”の域を脱することが難しい。さて、どうしたら良いのだろうか?
「これから我々はフランスの“エレガンス・サヴォアフェール”、つまりラグジュアリー・プロダクツに囲まれたライフスタイルをキーワードとしたいと考えています。
フレンチ・マニュファクチュールであることをアピールし、よりフランスのらしさを伝える新作も考えています。たとえば、トリコロール・ストラップのように、ちょっとしたところにフランスらしさを取り入れた製品です」
フランス国民の支持も後押しする
フレンチ・マニュファクチュールの決意
このトリコロール・ストラップを取り入れたモデルは、フランスでも話題となりマスコミにも取り上げられたという。
「そもそも、高級時計の製造がフランスで再開されたことは、フランス人にとっても嬉しいことなのです。ペキニエの復活は、先日もフランスの新聞『ル・フィガロ』でも記事になりました」
国民の支持を受けて着実に歩むペキニエ・マニュファクチュール。フランス国内での取扱店も増えたという。
「パリでの小売店は17軒あります。ギャラリー・ラファイエット、フォルジュ、コレットなど。あるショップでは別注のオリジナル・モデルを15本だけ販売したこともあります。さらに2015年11月にはパリに事務所を開設しました。フランスのビジネスは常にパリにを中心に回っていますからね。そこに事務所を置くことは、マスコミに対応することも含めて必要なことです。これは東京と同じですよ。時計店の方も一度はモルトーにいらっしゃいますが、二度目は“もういいよ”といいますからね」
確かにスイス国境に近いモルトーはパリからは相応に時間がかかる。とはいえ、その静かなモルトーを拠点にペキニエは今後もマニュファクチュールの改革と進化を推し進めていく決意だとカッツ氏は語る。
「今後、新しいマニュファクチュール・ラインのモデルも考えています。毎年、新しい複雑時計であったり、機能を付加していくことも計画しています。そして、生産体制も時計の品質も、常に改善していきます」
このようなペキニエの改革は、先頃、フランス随一の日刊紙「ル・フィガロ」の特集記事にも取り上げられた。
これによれば、自社製ムーブメントを開発しながらも会社更生法の対象となったペキニエを、ハイテク機器(コンピュータ用外付けハードディスク)の開発と販売で得た資金を投入して救ったのがフィリップ・シュプール氏とローラン・カッツ氏であった。彼らは一時的に製造を停止して品質向上に着手、同時に負債を整理し、部品サプライヤーとの信頼関係を再構築したことで、2014年にはバーゼルワールドへ復帰。新製品開発にも再び乗り出すことが可能となった。
このインタビューではカッツ氏はこう語っている。「ドイツは再び時計産業を興しました。我がフランスにそれができないことがあるでしょうか?」その回答は、ペキニエの現在を見れば明らかだ。
フレンチ・マニュファクチュールを象徴する
ボルドー・カラーのストラップが登場
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photos:Ryotaro Horiuchi
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