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2024 New Model | AiRAiN
2024年 エイレン新作 スーマリン

【編集顧問 田中克幸 ピックアップ】

 2020年に復興したエイレンのもうひとつのフラッグシップモデル「スーマリーン(Sous-Marine)」。仏語の“sous”=“隠れた、基底の”という接頭語を持つ1960年代のダイバーズで、エイレン復興3年後の2023年に復活。当時搭載された浸水防止機構“パルマンティエ・リューズ”も再構築し、120箇所のノッチ入り60分目盛り付き逆回転防止ベゼルも装備。また、これも当時の機構である“Fixoflex®ブレスレット”と、彼らがロリポップスタイルと呼ぶ秒針も再現。一方ムーブメントはラ・ジュウ・ペレのCal.G100ベースのCal.AM5を搭載。エイレンと同様、当モデルの復刻については、世界のウォッチコミュニティによる複数段階の投票結果を反映している。


スーマリーン

Sous-Marine
スーマリーン
Ref:524.437B
ケース径:37.50mm(ケースのみ) / 38.20mm(ベゼル込みのサイズ)
ケース厚:10.45mm
ケース素材:316Lステンレススティール
防水性:200m(20気圧)
ストラップ:クイックリリース トロピック スタイル FKM ラバー
ムーブメント:自動巻き、Cal.AM5、約68時間パワーリザーブ、毎時28,800振動(4Hz)、24石
仕様:時・分・秒・日付表示
価格:396,000円(税込)


※価格は発表当時の情報になります。最新情報につきましては公式サイトをご確認ください。


写真右側に見えるのは、1960年代当時のスーマリーンに装備された“パルマンティエ・リューズ(Parmentier crown)”の解説図面。基本的にはねじ込み式リューズ(screw-down crown)のことで、仏の退役軍人ジャン・レネ・パルマンティエ(Jean René Parmentier 1921~1998)が発明し、後に彼の名前が付けられた。1960年代は欧米や日本の一般大衆に“レジャー”が浸透し始めた時代。その中でマリンレジャーの広がりと共にスポーツウォッチ、特にダイバーズモデルは急速に台頭した。オリジナルのスーマリーンのパルマンティエ・リューズのキャップ・シールドは、ノッチの入ったリューズキャップ底部にある。当時のスーマリーンのリューズは小さすぎたので、巻き上げの一種の補助装置として活用されたようだ。しかし一方で、当時のリューズキャップは頻繁に外れるという難点があった。そこで復刻モデルにも採用されたパルマンティエ・リューズには、アタッチメント・システムの改良と同時にリューズ内部に防水バリア機構を装備した。これでリューズキャップが無くても30mの防水性能を確保している(キャップ装備状態では200m防水)。また復刻モデルの秒針だが、写真のモデルはロリポップキャンディ(棒にキャンディを付けたもの)のような秒針=“ロリポップ秒針”、別名“ストランド(strand=ビーズ、ワイヤー)秒針”を採用しているが、一般的な棒状のストレート秒針も用意された。これも世界の時計愛好家のマルチステップ式投票で決められた。


ストレートな針先に丸いキャンディを付けたようなタイプの秒針も用意。また写真モデルのブレスレットは、これも1960年代のオリジナルに採用された“Fixoflex®ブレスレット”を再現したもの。伸縮性と弾力性のある機構で、スーマリーンに限らず往時のヴィンテージ時計をお持ちの方には馴染みのあるブレスレットだ(お父上かお祖父様のモデルを譲り受けた方もいらっしゃると思われる)。“Fixoflex®ブレスレット”の元々のオーナーはドイツの有名なRodi & Wienenberger(ROWI社)(※註)。2019年に会社が閉鎖された時にラボアやエイレンの現オーナー、トム・ヴァン・ウィジリック氏(正確には氏の会社であるCDMLAC社)がFixoflex®のオーナーとなった。
(※註)ROWI:1885 年以来、ドイツ、プフォルツハイムに拠点を置くROWI GMBH 社のこと。時計および時計製造業界で活動するメーカー/プロデューサー。また、時計ストラップ、宝石商や金細工業者向けの供給品、時計製造、ブレスレット業界でも事業を展開した。


フランスで売られていた古いエイレン「スーマリーン」のポスター。“ダイバー(PLONCEURS)、スキーヤー、モーターサイクリスト、アルピニストに向けて”と書かれている。これを発見したトム・ヴァン・ウィジリック氏には、すぐさま復刻モデルの製作アイデアが浮かんだ。エイレンやラボアの復刻プロジェクトと同様、スーマリーンの復刻には世界のウォッチ・コミュニティに助言を求め、マルチステップの投票ラウンドを通して、徐々に現在の姿が浮かび上がってきたと彼は説明する。例えばスーマリーンでの初回投票は「秒針のデザイン」。最終アイデアは細い針先に丸い輪が付いた典型的なデザインのものと、この写真のポスターに見られる当時のロリポップ・キャンディ風デザインに分かれたが、世界のウォッチ・コミュニティの大多数は後者を選んだ。しかし「結局は両方のデザインを作ることにしました」(トム・ヴァン・ウィジリック氏)。投票の第二段階では、写真では見られないがケースバックのグラフィックが検討された。これも3つの候補から“銛を右手に深海へ潜航するダイバーのイラスト”に決定。このように複数段階(マルチステップ)の投票を経て、現在のスーマリーンは完成したのである。これはエイレンやラボアも同様だ。この10年ほど、世界のウォッチ・コミュニティの時計製造への積極的な参加が盛んになってきており(彼らとカスタムメーカーとの連携も深くなっている)、現代の時計会社にとっては貴重なパートナーのひとつとなっていると思われる。


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