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Watch Person Interview vol.70グラハム 創業者・役員 エリック・ロト インタビュー

クォーツ・クライシスによる自身の成長
自身の情熱によって誕生したグラハム

クォーツ・クライシスによる自身の成長 自身の情熱によって誕生したグラハム

「長く続いている時計ブランドは、昔から商品を大事にする姿勢を持っていましたが、これは私も同様のスタンスです。現在、新作の数を減らしていますが、これは、ひとつひとつのモデルをじっくり育てたいという考えもあるのです」

「ジョージ・グラハム(1673~1751年)は、時計史に偉業を残した歴史的人物ですが、その当時、グラハムはブランドではありませんでした。私たちはグラハムをブランドとして創設するにあたり、ただ彼の名前を使うだけではなく、ジョージ・グラハムの歴史についてしっかりと勉強しようと考えたのです。1995年にブランドを起ち上げましたが、ジョージ・グラハムの研究には約4年を費やしました」


  グラハムの創業者であるエリック・ロト氏は、エンジニアとして時計業界に入り、その後、大手時計製造グループでキャリアを積んだ経歴を持つ。しかし、ロト氏がこの世界に足を踏み入れたのは1980年代初頭。時計業界はクォーツ・クライシスの真っ只中にあった。


「当時は“生きるために頑張っていた”状況でしたね。時計業界を守るために、会社の組織体制を見直す必要にも迫られ、週末も休みなく働いていました。大変な時期でしたが、今思えば、現在の私を育てたのはクォーツ・クライシスだったと言えるかもしれません」


  家族の助言もあって会社を辞めたロト氏は、その後、コンサルタントとしてさまざまな時計ブランドに携わるようになる。その一方でスタートさせたのが、英国のマスター・ウォッチメーカーの名を冠したスイス製ウォッチの製作プロジェクト「ブリティッシュ・マスターズ」だ。かねてより、ロト氏はイギリスの歴史や文化に興味を抱いており、そんな彼の情熱によってスタートしたこのプロジェクトからグラハムが誕生する。


「私は以前から歴史を大切にしたいと考えてきました。でもそれは、歴史をなぞるということではありません。イギリスが好きだからこそ、イギリス時計界のストーリーをブランドで展開していきたかったのです。その中でもジョージ・グラハムに着目した最大の理由は、彼がエモーショナルで理知的な人物であったから。ジョージ・グラハムは時計史で初めてクロノグラフを作ったことで知られていますが、この機構が特許を取得していないという事実を含め、彼は自身のさまざまな発明で特許を取得することを拒否し、世の中のために使えるようにしていました。そのような姿勢に感銘を受けたのです」

飛躍の切っ掛けになったのは
カーボンベゼルの採用

飛躍の切っ掛けになったのは カーボンベゼルの採用

「現在展開している『クロノファイター スーパーライト カーボン』は、当初から100gよりも軽くしたいと考えて開発を進め、結果、98gを実現した超軽量モデルです。初年度の製造本数は年間20~30本で、現在でも200本にとどめています」

  こうしてグラハムは1999年にブランド初となる時計を完成させ、2年後の2001年には、のちにブランドの基幹コレクションとなる「クロノファイター」を発表する。


「1995年にグラハムを起ち上げ、2000年にはコンサルタント業務をやめました。グラハムに集中したかったのがその理由です。2001年に『クロノファイター』をローンチした後は、2002年に『シルバーストーン』を、2005年には『ソードフィッシュ』をそれぞれ発表しました」


  そして2005年。グラハムはブランドのターニングポイントとなる、もうひとつのモデルを完成させている。それが「シルバーストーン」のカーボンベゼル・モデルだ。


「カーボンベゼルを作るのは、何よりも大変でしたね。カーボンの製造には大きな専用の機械を必要とするのですが、それを使って小さなベゼルを成形するのはチャレンジでした。当時、時計にカーボンを採用しているブランドはまだ少なく、試行錯誤の繰り返しだったことを覚えています。しかし、カーボンベゼルが完成し『シルバーストーン』に採用してからというもの、ブランドは急速に成長していったのです」


  設立から10年。この急速な成長は、ロト氏にとってエキサイティングな経験だったという。新たにスタッフを迎え、チームを再編するなどし、ブランドは急速に拡大。2008年に起こったリーマン・ショックにより一時的に打撃を受けるものの、その後は徐々に回復していった。


「私の中には常に商品のアイデアがたくさんあるので、マーケティングよりも商品に集中したいという思いが常にあります。そのため、以前は多くの新作を発表し、モデル数が増えすぎてしまうような時期もありました。結果的にこれは、モデル数をコントロールするためのいい経験になりましたね。その後は、ハイライトとなる時計を年に2モデルくらいのペースでリリースするようにしています。もちろん、モデル数をコントロールしているとはいえ、私にとっては商品が一番大事。利益はもちろん大切ですが、それよりも、商品をしっかりと育てていきたいと考えています」

取材・文:竹石祐三 / Report & Text:Yuzo Takeishi
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto


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