Watch Person Interview vol.70フレデリック・コンスタント マスター・ウォッチメーカー ピム・コースラグ インタビュー
シリシウムを採用したFC-945で
フレデリック・コンスタントが目指すもの
「初めて手掛けたFC-910とクロノグラフ・ムーブメント、そしてこのFC-945は、私にとって特に思い入れのあるムーブメントですね」
初の自社製ムーブメントを発表してから3年。2007年のバーゼルワールドで、フレデリック・コンスタントは「ハートビート マニュファクチュール シリコン ムーンフェイズ」を発表した。搭載するムーブメントはFC-935で、エスケープ・ホイールにシリシウムを採用したものだ。この頃、シリシウムを使っていたのはごくわずかなブランドのみ。フレデリック・コンスタントは、かなり早いタイミングでこの素材に目を付けたことになる。
「2005年頃、時計業界でシリコンパーツが話題になり、すぐに採用を決めました。当時はエスケープ・ホイールのみでしたが、2014年に発表したFC-945ではアンクルと振り座にもシリシウムを使用しています」
軽く、摩擦係数が低く、注油も不要。そして耐磁の問題も回避できるなど、シリコンのメリットは多く、現在、この素材を採用するブランドは増えつつある。
「シリシウムは一般的に使用されている鋼材よりも5分の1程度の重さしかないので、ホイールが回転するうえでのエネルギー効率が飛躍的に向上します。クルマで例えれば、スピードを出しやすい。しかも軽いので制動性もいいというわけです。また、シリシウムは表面が滑らかな特性を持っています」
そう言って取り出したのは、厚さわずか0.5mm、直径100mmほどの円形の板材。“シリシウムウエハー”と呼ばれるもので、ここにエスケープ・ホイールやアンクルが焼き付けられ製造される。
「通常、シリコンはグレーなのですが、このウエハーは光の当たり具合でパープルやグリーンに変化する不思議な色合いになっています。酸化皮膜を施しているためで、この処理を施すことで表面に強度をもたせ、滑らかにする効果を生み出しています。表面が滑らかであれば、当然エネルギーのロスはなく、しかもエスケープ・ホイールへの注油も不要になります」
2001年からこれまでに、コースラグ氏は30種類近いムーブメントを手掛けている。そのなかにはミニッツリピーターも存在するが、スタース氏から高評を得る一方でフレデリック・コンスタントのブランドコンセプトには合わないとの判断から、2008年にアトリエ・ド・モナコが起ち上げられた。
「アトリエ・ド・モナコはジュネーブシールを取得している高級ブランドという位置づけ。対するフレデリック・コンスタントはバリューのある価格帯というポジションです。現在でもアトリエ・ド・モナコのムーブメント製作に携わっていますが、両者とも非常に個性的でパワフルなブランドだと思っています。特にフレデリック・コンスタントは革新的であるとともに、Accessible Luxury(手の届くラグジュアリー)……つまり価格的な魅力も備えている。この重要なコンセプトを貫いていくためにも、挑戦しなければいけないことはまだたくさんあるのです」
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ハートビート マニュファクチュール
MANUFACTURE HEART BEAT
2007年に発表されたモデルに改良を施し、エスケープ・ホイール、アンクル、振り座の3パーツにシリシウムを採用した自社製ムーブメントFC-945を搭載。ダイアルにはギョーシェ模様が施され、12時位置に設けられたムーンフェイズやローマンインデックスと相まって、エレガントな表情にまとめられている。
Ref.:FC-945MC4H6
ケース径:42.0mm
ケース厚:11.6mm
ケース素材:SS
防水性:5気圧
ストラップ:アリゲーター
ムーブメント:自動巻き、Cal.FC-945、28,800振動/時、42時間パワーリザーブ、26石、部品数126個
仕様:ムーンフェイズ、ハートビート、シースルーバック、24時間計
価格:740,000円(税抜)
取材・文:竹石祐三 / Report & Text:Yuzo Takeishi
写真:湯浅立志(Y2) / Photos:Tatsushi Yuasa(Y2)
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