FRANCK MULLERフランク ミュラーの次世代を担う旗艦コレクション「ヴァンガード」の魅力の根源とは?
次世代を担う「ヴァンガード」の
大胆にして華麗なスケルトン
1990年代の初め、独立時計師フランク ミュラーが開発した「トノウ カーベックス」は、ある種のノスタルジアを掻き立てた。原点は20世紀初頭、懐中時計から腕時計へと進化し、そのファッション性を主張するためラウンド型ではないモデルが多数、作られたが、そのひとつがトノウ(樽)型であった。
古典時計の修復も手がけていた当時のフランク ミュラー工房には、修復に持ち込まれたヴィンテージ・ウォッチが溢れ、彼はこれらを参考にどこか懐かしいが、実はどこにもない独創のフォルムを創出した。
やがて「トノウ カーベックス」とフランク ミュラーが40~50回もの試作を繰り返して生み出した「ビザン数字」と呼ばれる個性的なアラビア数字インデックスが人気を獲得。停滞していた時計界に新たな潮流を巻き起こした。
あれから20年以上を経て2014年にフランク ミュラーが新たに創出したのが「ヴァンガード」だ。このフォルムは「トノウ カーベックス」を基としつつ、ストラップ装着部をケース一体として流れるようなラインを形成。側面にはスリットを刻んでケースからストラップへ繋がる流麗なフォルムを際だたせた。
この「ヴァンガード」の2019年の新作が、大胆なオープンワークを施した「ヴァンガード 7デイズ パワーリザーブ スケルトン」である。
これまでスケルトンというと丸みを帯びたラインでムーブメントを透かし彫り加工し、アラベスク模様を彫り込むのが主流。だが、この新作は直線的に地板とブリッジを肉抜きし、彫金の代わりにダイヤモンドをセットしている。
つまり従来の古典的な美意識ではなく、「ヴァンガード」の未来フォルムにマッチするモダンな意匠が展開されているのだ。
フランク ミュラーの次世代を担う旗艦コレクション「ヴァンガード」。そのスケルトン・モデルは時計の世界に新たな美意識と先進的なフォルムの融合をアピールする、2019年一番の話題作である。
ヴァンガード 7デイズ パワーリザーブ スケルトン
新たな価値観を創出する
「ヴァンガード」のベーシック・モデル
“懐かしいが、どこにもなかったフォルム”として人気を獲得した「トノウ カーベックス」に、新たな解釈を加え、2014年のWPHH(フランク ミュラー グループによる新作時計展示会)で発表されたのが「ヴァンガード」だ。
それは、これまでのフランク ミュラーを牽引してきた「トノウ カーベックス」や「ロングアイランド」と並ぶフランク ミュラーの代表コレクションに成長した。
「ヴァンガード」の特徴は、まず、ストラップとの一体感を高めたケース・フォルム。さらに、そのケース側面にスリットを刻むことでストラップからケースへと流れるラインが強調され、未来的なフォルムを、一層、強調することに成功している。
なお、このコレクションの「ヴァンガード」という名称は「前衛」や「先駆者」という意味。まさに打って付けのネーミングである。
そして次の特徴は、フランク ミュラーを代表する書体として世界に知られる「ビザン数字」とは異なる新たなインデックス書体と、立体感を高めた造形美だ。
その彫りの深さは一目瞭然。圧倒的なヴォリューム感を持つ曲面構成のケースとダイアルから浮き立つアラビア数字インデックスの立ち上がる様子は、これまでのどの時計にもなかった豊潤な輝きに満ちている。
またフランク ミュラーが“カーベックス”と名付けた腕に沿って立体的にカーブしたフォルムも「ヴァンガード」ではより強調された。
そもそも“カーベックス”の原点は1930年代、モータリゼーションの高まりに呼応して生まれたドライブ用ウォッチのフォルム。それを規範としつつ、腕にピタリとフィットし日常生活にもマッチする新たなフォルムをフランク ミュラーが生み出したのである。
独立時計師として、あらゆる分野での世界初を目指しトゥールビヨンやミニッツリピーター、永久カレンダー、ダブルフェイスなどの複雑機構を次々に実現したフランク ミュラー。だが、その根底には時刻の読み取りやすさというベーシックな機能が常にあった。新たなフォルムをまとい誕生した「ヴァンガード」は、この事実を改めて知らせてくれる。
ヴァンガード
デザイン性と視認性が高次元で融合した
「ヴァンガード」のクロノグラフ
2014年の「ヴァンガード」発表時、同時に登場したのが、そのクロノグラフ・バージョンである。このモデルもノーマルな三針の「ヴァンガード」同様、ストラップとの一体感を強調した未来的なフォルムと、このコレクションのために新たに開発された立体的で陰影に富んだアラビア数字インデックスが採用された。
もちろんクロノグラフならではの特徴も多い。たとえば計時のスタート&ストップを司るプッシュボタンは、ケース側面のスリットに埋め込むことで、一体感とヴォリューム感を損なわない独自形状を開発。インダイアルでは3時位置の30分計と9時位置のスモールセコンドを備え、6時位置の丸い窓で日付を表示するというシンメトリー(左右対称)な構成が採用されている。
このインダイアルの立体感も抜群だ。サークルを取り囲むリングはアラビア数字インデックスと同じ高さまで持ち上げられ、その内側に精緻な目盛を印字し、さらに一段、低い位置に秒や分の数字をプリントするという手の込んだ工程が採用されている。
また、最新のホワイト・バージョンではフランク ミュラーのシンボルである“FM”のエンブレムが12時位置にセットされ、その血統の正しさをアピールする。
そして、このクロノグラフにも、これまで紹介した「ヴァンガード」と同じく、表面にクロコダイル、裏面にラバーを張り合わせた新型ストラップが装着されている。
このストラップの構成からもわかるように、「ヴァンガード」とはフランク ミュラーにとっての新たなフォルムを持つ旗艦コレクションであると同時に、初のスポーツラグジュアリー・ライン。この大胆な存在感はスイス時計の明日を担う活力に満ちている。
ヴァンガード クロノグラフ
取材・文:名畑政治 / Report & Text:Masaharu Nabata
写真:江藤義典 / Photo:Yoshinori Eto
INFORMATION
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