SEIKO Presage日本が世界に誇る磁器製造技術から生まれた『セイコー プレザージュ』の有田焼文字板 01
世界最高強度磁器素材の開発が
有田焼を時計文字板へと進化させた
我が国の時計界を牽引するセイコー。その豊富なラインナップはスイスの有名メゾンを凌駕し、ぜんまいから外装まで、あらゆる部品を自社および関連工場で生産する“完全なるマニュファクチュール(自社一貫生産工場)”としても世界的に貴重な存在である。
そのセイコーの豊富なコレクションの中でも、2011年に「100有余年にわたる機械式時計作りの伝統とノウハウを受け継ぎ、世界に向けて日本の美意識を発信するブランド」としてスタートした『セイコー プレザージュ』は、さまざまな技法を駆使した文字板などを次々に発表し、常に時計愛好家の耳目を集める話題のコレクションに成長した。
この秋、この『セイコー プレザージュ』に、日本が世界に誇る伝統工芸である有田焼の技法を用いて作られた文字板を装備する画期的なモデルが新たに登場した。
そもそも有田焼とは、日本で最初の磁器(高温で焼成され、陶器よりも透明度や強度の高い焼き物)として1616年(諸説あり)に誕生。以後、その技術と伝統を受け継ぎ、今日に至るまで我が国を代表する工芸品としての地位を保ち続けている。
そして今回、『セイコー プレザージュ』に採用された文字板には、佐賀県有田町による『有田焼創業400年事業』の一環として佐賀県窯業技術センターで進められていた新しい高強度磁器材料の開発の成果が用いられている。
この開発事業から誕生した新しい磁器素材(特許出願中)は、市販される一般磁器材料の3~5倍、従来からある強化磁器材料の約1.5倍の強度を誇り、“世界最強の磁器材料”と呼べるものだという。
しかも、この新しい磁器材料は通常の磁器と同じ工程と同じ約1,300℃という焼成温度で製造できる利点もある。まさに腕時計の文字板素材として理想的なのである。
さらに、通常の磁器であれば多少の大きさのバラつきは許容されるが、ケースやムーブメントに合わせて厳密に規格が決められている文字板では、すべてをピタリと同じサイズで仕上げることが要求される。このような精密な加工と焼成についても、有田焼の職人は見事にその要求に応えたのである。
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磁器中のガラス成分の配合を工夫することで焼成時に気泡を小さく少なくして高い強度を実現したという。
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配合された材料に水を加えて「泥漿(でいしょう)」とし、これを石膏の型に流し込む「鋳込み成形」により文字板の形が作られる。
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石膏型が急速に水を吸い泥漿は短時間で固まる。上下二分割の型をはずすと文字板の形になっているので、これを取り出す。
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型からはずす前、指で文字板の素地を触り、突起の有無を確認。この時点で突起などは除去されるが、これらはすべて手作業で行われる。
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型から取り出した文字板を乾燥させる。型をはずした直後はまだ水を含んでいるので黒ずんでいるが、乾燥すると真っ白になる。
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乾燥後、約1,300℃で締焼きが行われ、その後、スプレーガンを使って施釉(せゆう=釉薬を塗ること)が行われる。
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レーザー加工が完了した文字板は、再び検査を受けた後、約1,000℃の窯で仕上げ焼きを行う。
厳しい要求に応えて
有田焼の可能性を広げた職人魂
佐賀県窯業技術センターが開発した世界最高強度の磁器材料を用いることで実現した『セイコー プレザージュ』の有田焼文字板。その製作を監修したのは、有田町で180年以上続く老舗磁器会社『しん窯』所属の陶工・橋口博之(はしぐち ひろゆき)氏である。
この文字板を作るには、実に多くの複雑な技術と工程が要求される。
まずは素材の選定。有田の磁器といえば泉山の磁石(陶石)を思い起こすが、ここでは、一般の磁器よりもはるかに強度の高い最新の強化磁器を用いている。
この陶土を、水で溶いて液状の泥漿(でいしょう)を作り、これを型に流し込んで生地と呼ばれる文字板の形を成形する。
文字盤の生地は型から取りだした直後に手で触れて突起があれば除去。充分に乾燥させた後も手作業でバリを取り、約1,300℃で締め焼きを行う。次に、やはり手作業で釉薬を吹き付け、約1,000℃で焼くことで表面に有田磁器特有の淡く青みがかった美しい光沢が生まれる。
この後、針の通る穴や日付表示の窓などをレーザー加工で切り抜き、約1,000℃の仕上げ焼きを施す。
これらの工程の後、専門の工場に送ってインデックスやロゴなどを印字することで、ついに有田焼文字板が完成に至るのである。
>>有田焼の伝統美が薫り立つ『セイコー プレザージュ』の新作
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
協力:セイコーウォッチ Special Thanks:Seiko Watch Corporation
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