Grand Seiko日本屈指の本格腕時計組立工房『グランドセイコースタジオ 雫石』現地レポート 05
盛岡セイコー工業・林義明社長が考える
『グランドセイコースタジオ 雫石』に不可欠な3つの価値

ガラスを多用したことで外光をたっぷりと取り込み、自然を存分に感じられるのが『グランドセイコースタジオ 雫石』の魅力のひとつ。
『グランドセイコースタジオ 雫石』の計画がスタートしたのは2018年。スタジオ設立に向けたプロジェクトの発足、隈研吾氏への設計依頼を経て2019年に着工。オープンしたのは、ブランドが誕生60周年の節目を迎えた2020年7月なので、スタートからわずか2年でオープンまで漕ぎつけた形だが、建物の完成度が高いことはもとより、スタジオのコンセプトも非常に明快だ。盛岡セイコー工業の代表取締役社長・林義明氏は、スタジオ設立の経緯を次のように説明する。
「多くの方に『THE NATURE OF TIME』というブランドフィロソフィーを体感していただくとともに、機械式のグランドセイコーを世界に発信する施設にしたいという思いからスタジオは生まれました。将来的には、機械式のグランドセイコーの商品領域や販売を拡大していくことも目的としています」
残念なことに2022年3月の時点で一般公開は行われていないが、工房は順調に稼働している様子で、編集部がスタジオを訪れたときは、ちょうど2021年内出荷分の製造が大詰めを迎えているタイミングであった。現場は慌ただしい雰囲気に包まれていたが、前頁でも触れた“島”形式の導入により生産性は向上しているという。現場の時計師も「従来のL字型作業台をストレートタイプにリノベーションし、配置をチームごとの“島”形式に変更して流れ作業方式になったため、後工程へ現品の受け渡しがスムーズになり、生産性が向上した」とコメントしており、新工房は製造面で大きなメリットを生んだことが分かる。その一方で、林氏には次のステップも見えているようだ。
「時計師の技術・技能だけではなく、部品精度の追求も同じく重要です。部品精度のさらなる向上のために必要な設備投資の検討を進めていますし、また、例えば準備作業を自動化するなど、効率化できる作業を見極めつつ、人・匠の手でしか成せない工程はさらに技能の向上を図るなど、人と機械の適正な分担での対応を検討しています」
作業効率のアップに加えてスタッフに好評なのが、自然をすぐそばに感じられる建物の設計。工房から岩手山を一望できる見晴らしの良さや、野生の動物が姿を現す環境は、スタッフ同士のコミュニケーションを円滑にし、仕事に取り組むうえでのモチベーションにもつながっているという。こうした「自然との共生」は、盛岡セイコー工業が掲げる理念のひとつ。スタジオ周辺のみならず、同社の敷地には至るところに緑地があり、ここに生き物が住みやすいようにする生物多様性保全活動を積極的に行なっている。
実際に敷地内を散策すると、同社が木々に囲まれた場所であることを実感するのはもちろん、虫を寄せ集めるインセクトホテルや巣箱も目に留まる。春から夏にかけては、鮮やかな緑とともにさまざまな生き物を観察できるのも、スタジオを訪れるひとつの楽しみになりそうだ。
『グランドセイコースタジオ 雫石』が完成した2020年、林氏は「ここに魂を加えていくのは人=従業員。皆と一緒に従来の工房から進歩した姿を形づくり、それを多くのファンの皆さんにも体感していただきたいと、改めて身の引き締まる思いとなった」という。
「“THE NATURE OF TIME”を基本に、機能的価値、感性的価値、社会的価値という3つの価値創造をさらに進化させ、自然との共生や地域との共創により、持続化可能な地域社会の発展にもつなげる。それこそが、この先、グランドセイコーと『グランドセイコースタジオ 雫石』の発展において大切なことだと考えています」
工房見学や自然とのふれあいにとどまらない
『グランドセイコースタジオ 雫石』の見どころ
『グランドセイコースタジオ 雫石』は2フロア構成。1階は展示コーナー、クリーンルーム(組立工房)の様子も見られる。2階には岩手山が一望できるラウンジがあり、ここでは前述したスタジオの模型や、コンセプトモデル「T0 コンスタントフォース・トゥールビヨン」を展示。ショップも常設されており「『グランドセイコースタジオ 雫石』 オリジナルモデル SBGH283」をはじめとするスタジオ限定モデルも購入できる。
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