Fukushima Watch Company注目の小規模時計メーカー「Fukushima Watch Company」とは? 01
埼玉での創業とファースト・モデル
「mirco TYPE-02」の発売

2018年、「フクシマ・ウォッチ・カンパニー」の平岡さんが埼玉で時計会社を起こし最初に開発した「mirco TYPE-02(ミルコ タイプ02)」。「もしも1969年に始まるクォーツ・ショックがなかったら?」という想定のもと、当時のスタイルを独自視点でリデザイン。海外市場を目指しスイス「バーゼルワールド」にて世界初披露された。現在は品切れ中だが復活も検討中。
私と「Fukushima Watch Company(フクシマ・ウォッチ・カンパニー)」との出会いは、今から6年ほど前の2018年に遡る。といっても、実はその時はまだ「フクシマ・ウォッチ・カンパニー」ではなく、埼玉で時計卸業を営んでいた平岡雅康さんが立ち上げた時計会社が最初の製品「mirco TYPE-02(ミルコ タイプ02)」を発表したばかりのころ。Gressiveにコンタクトがあり、私としては興味を示したものの、なぜか取材の機会を逸し、それがずっと心残りだった。
その平岡さんが東日本大震災による原発事故で一時期、無人となった福島県南相馬市小高区に移転し、改めて「フクシマ・ウォッチ・カンパニー」として活動を再開したと聞き、これはぜひ取材しなければと決意したのである。
聞けば創業者の平岡さんは埼玉県大宮市(現・さいたま市)の出身。国産時計のメーカーに勤務し営業を担当していたが、そのメーカーを退職して都内の時計店を転々としながら高級時計のバイヤーとして活動したという。
その後、独立して地元埼玉で時計の卸業を営んでいたが、2011年に東日本大震災が起き、ボランティアとして東北各地を訪れる中、立ち入りが制限されたことで手つかずの自然が残されていた南相馬市の小高区に辿り着いたという。
だが、そこで復興を叫んでも仕事がなければ人は戻ってこないし復興もできない。そこで平岡さんは東北地方に時計や部品の製造工場が点在することに着目し、そこに時計作りの産業を興すことを考えた。こうして東北にある数カ所の工場で部品を作り、それをまとめて腕時計の生産を実現。それが2018年に発表された「mirco TYPE-02(ミルコ タイプ02)」だった。
驚くのは、この初の腕時計をなんと時計の本場スイスの「バーゼルワールド」で発表したこと。平岡さんは「メイド・イン・ジャパンを海外なら受け入れてくれると考えたんです」と語るが、大した度胸だと感心してしまう。
この最初の製品は彼の言葉どおり、ヨーロッパ市場を意識したもので、ブランドはアルファベットで「mirco(ミルコ)」。自身が好きな1960~70年代のスタイルを意識し、あえてレトロなデザインを採用したツーインダイアルの自動巻きクロノグラフであった。
レトロなダイバーズ「mirco TYPE-03」
そして福島県南相馬市への移転を決意

「フクシマ・ウォッチ・カンパニー」があるのは福島県南相馬市小高区。福島県の太平洋側に位置する、福島県のいわゆる「浜通り」と呼ばれる地域にあって、山と海に囲まれた自然豊かな場所である。この地区には江戸時代まで小高城と村上城というふたつの城があり、城下町として機織り(はたおり)や木工などの職人の街として賑わっていたという。2011年の原発事故により福島第一原発から半径20km以内にある小高区に避難指示が出され、2022年8月に解除されるまで、いわば時が止まっていた。
最初のモデルである「mirco TYPE-02(ミルコ タイプ02)」を発表した後、次の製品として開発されたのが、現在も販売が続いているダイバーズ・タイプの「mirco TYPE-03(ミルコ タイプ03)」である。
このモデルもヨーロッパ市場を意識してダイアルの防水機能表示をフィートとメートルをあわせて「WATER PROOF 660ft/200M」と表記されている。また、このモデルでは日本独自の感性を打ち出すことを重視し、スタート当初から日本の伝統色をダイアルとベゼルのインサートリングにあしらったモデルを5色展開していることも大きな特徴となっている。このような日本の伝統色は特にアメリカなどで反響が大きいと平岡さんは言う。
また、最初の「タイプ02」も次の「タイプ03」でも、通常の12時位置ではなく、6時位置にロゴが入っている。その理由を尋ねると平岡さんは「実はダイアルにいろいろと文字が入っているのは好きではないし、6時位置のほうがバランスが良いと感じたので現在のデザインになりました」と説明する。
そして2022年9月、平岡さんはついに福島県への移住を決断。同年11月に、南相馬市小高区に「フクシマ・ウォッチ・カンパニー」が設立され、新たな活動をスタートさせたのである。
INFORMATION

フクシマウォッチカンパニー(Fukushima Watch Company)についてのお問合せは・・・
株式会社 Fukushima Watch Company
〒979-2162 福島県南相馬市小高区飯崎字南原101-8
フクシマウォッチカンパニー ブランドページを見る