Watch Person Interview vol.58 常に研究し、新分野を開拓する ジャケ・ドローの芸術的時計作り
“パイヨン”と呼ばれる金の細片をエナメルの上にのせて焼成した特殊な七宝技法を駆使したモデル。ジャケ・ドロー父子が得意とした技法だが、その後、スイスでもほとんど失われてしまった。この技法を現代に甦らせたのはジャケ・ドローの功績でもある。
クリスチャン・ラトマン
Christian Lattmann
スウォッチ グループのスイス本社でロンジンやオメガを経て、2006年にブレゲ副社長およびヘッド・プロダクト・マネージャーに就任。2009年からジャケ・ドローの副社長を経て、2016年6月にCEOに就任。
ラトマンCEOの説明通り、他社ではなかなか目にすることのできない特別な工芸技術を駆使した時計作りで高い評価を得ているジャケ・ドロー。これらの作品は、どのような体制から生まれているのだろうか?
「芸術的・工芸的な時計の製造については、100%インハウスであり、自社の工房に優れた職人を抱えています。ただし、私は独立したアーティストの存在を否定するものではありませんし、彼らに対して門戸を閉ざすことはありません。
もしも、非常に高いレベルの技術を持った職人がいて、彼らが『私は自宅で作業したいんだ』というのであれば、仕事を依頼することもあるでしょう。
ジャケ・ドローにとって重要なのは、なによりもイノベーション(革新性)と創造性です。ですから、クラフトマンと技術者の共同作業によって、常に新たなモデルが誕生するのです。そこで大切なのは美しさですが、もちろんムーブメントの精度や機能も忘れてはなりません。単にクラフツマンだけでなく、時計師の技術を駆使することで、優れた作品が完成するのです。
我々の工房には7人のクラフツマンが在籍しています。エナメル・ミニアチュールのペインター(七宝細密画を描く人)、エングレイバー(彫金師)、パイヨンの職人などです。研修生も1名います。彼等は二次元のものを三次元に構築する力があるのです。オートマタの専任技術者も2名います。
こういった職人を確保するのは、とても難しいのですが、我々は、常にラ・ショー・ド・フォンの美術学校と良い関係を保っています。なぜならジャケ・ドローのアトリエでは、常に新しく特別なモデルを作っているので、これらの時計がアーティストにとって常に挑戦をし続ける場となり、刺激になるからです。しかもジャケ・ドローはスイスにおいて非常に有名ですから、美術学校の卒業生たちも、こぞって我々の会社で働きたいと希望してくれるのです」
独創的な時計作りはもちろんだが、2014年は日本で行われたベジャール・バレエ・ダンス カンパニーの公演へのサポートでも話題となったジャケ・ドロー。2016年は、どんなイベントが控えているのだろうか?
「我々はなによりもまず、製品の開発と製造に注力していきますが、日本での今年の仕事のひとつに、銀座ブティックのリニューアルがあります。これにより2016年秋には新しいコンセプトの店が誕生し、いち早く新作を展示することになるでしょう。
そしてワールドワイドでは、ベジャール・バレエ・ローザンヌやベジャール・バレエ・ダンス カンパニーも引き続きサポートしていきます。
ピエール-ジャケ・ドローが世界を旅してオートマタを人々に紹介したように、私たちは、バレエをサポートすることで、当時の人々が感じたのと同様のエモーション(感動)を体験して頂きたいのです。このメッセージを発信するために、我々はベジャール・バレエ団が行う世界60か国以上を訪れるワールド・ツアーに協賛しているのです。
そして、バレエを見て感じたように、ジャケ・ドローの遺伝子を受け継いで製作された時計を、大人であっても子供ような気持ちで手に取り、“Art of Astonishment”(芸術に触れた時の純粋な驚き)を感じていただければと考えて、活動を続けていきます」
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:堀内僚太郎 / Photo:Ryotaro Horiuchi
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