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PEQUIGNET蘇ったフランス唯一の本格マニュファクチュール、ペキニエの現在

「フランス人としての愛国心が
ペキニエを選んだ理由です」

「財務面での不安はもうありません。我々は自分たちに対する信頼感を持ち、独立性を大切にし、あくまでも自立したい」と語るペキニエのダニ社長

「財務面での不安はもうありません。我々は自分たちに対する信頼感を持ち、独立性を大切にし、あくまでも自立したいので、サプライヤーに対しても顧客に対しても負荷をかけることはないと思いますからご安心ください。ただ、決して気を緩めてはいませんが」


 スイスが時計大国であることは誰もが知るところだが、実はフランスにもかつて多くの時計メーカーが存在した。これが壊滅的な打撃を受けたのは1970年代のクオーツ・ショック。そのフランスで自社製ムーブメントを久々に実現したのがペキニエだった。

 モルトーに本社を構えるペキニエは2007年にムーブメント開発に着手し、2009年に試作品を発表。翌2010年に久々のフランス製ムーブメント『カリブル ロワイヤル』を正式発表し“フレンチ・マニュファクチュール”の再興が実現した。

 だがペキニエはその後、ムーブメント開発の多大な投資で経営が悪化。資本の注入や経営陣の入れ替えなど苦難の道を歩んできた。しかし2年前に新たな経営陣の手に委ねられて財務状況が安定し、再び唯一のフレンチ・マニュファクチュールとして新製品開発などに力を入れる状況が整ってきたという。

 そこで今回、来日したペキニエ社長ダニ・ロワイエ氏に、なぜ危機的状況のペキニエを選び、その再建に成功したのかを聞いた。


「2014年に私がペキニエに入った理由のひとつは愛国心です。ペキニエはフランス唯一のマニュファクチュールですから、自分が働くことに意義があると考えたのです。また、私はエンジニアですから『カリブル ロワイヤル』が技術的にレベルが高いと知っていたので、それにも興味を抱きました」


 ダニ氏はシャンパーニュ地方生まれのフランス人。フランスの主要な時計生産地であるブザンソンの精密機械工学専門学校で学び、卒業後は大手時計グループのムーブメント製造会社を経て、別のムーブメント・メーカーに移籍。そこでは新機構開発やムーブメント設計など純粋に技術的な仕事を担当したという。その後、品質管理部門に移って時計には技術だけではない側面があると知り、ペキニエから“再建を手伝ってほしい“と打診され、“これもひとつの挑戦だ”と思い入社したという。ここで“挑戦”という言葉が出たが、それは何を意味するのか?


「簡単に言えば、『カリブル ロワイヤル』は可能性が完全に発揮されていないため、やるべき事があったということです。その将来性を考えるのが私にとっての挑戦でした。
 ペキニエに入って最初のミッションは『カリブル ロワイヤル』に改善や改良を加え、どこの市場においても絶対的に優れたものであることを納得してもらうこと。もちろん財務的に難しい時期だったので、まさに挑戦でした。
 このムーブメントの改良に加え、工房での組み立てから発送に至る生産管理でも、前職での経験と知識を生かし体制を整えました。さらに第2タイムゾーン表示のGMTを開発し、手巻きモデルも開発しました」


高度な技術を駆使し
新型ムーブメント開発を目指す

「確かに今、ペキニエがきっかけになったかどうかわかりませんが、いくつかのブランドがフランスで生まれたり再生されています」と語るペキニエのダニ社長

「確かに今、ペキニエがきっかけになったかどうかわかりませんが、いくつかのブランドがフランスで生まれたり再生されています。ただし、すべて自社で生産する会社はなく、ムーブメントをスイスから仕入れ、ケースを他の国で作って、というブランドが大半ですから、我々の本当の競争相手にはなり得ませんね。もちろん価格帯も違います」


  もともと精密機械工学エンジニアであり、前の会社で生産と品質の管理も経験したダニ氏こそ、ペキニエの再建に必須の人物だった。ただ、財政が不安定な中、新たな挑戦に打ち込むことができたのが不思議だ。


「当時、会社の状況を不安に感じてはおらず、私も開発チームも極めてモチベーションが高かったんです。もちろん、完全に安心していたわけではありませんが、製品に対する信頼があったので動揺はしていませんでした。

 しかもマニュファクチュールを続けることには正統性があります。マニュファクチュールとは白紙の状態から時計を作り上げることですが、フランスにはその歴史があり、我々はしっかりと仕事をしてきたという自負もありました」


 技術者であるダニ氏をして、そこまで自信を持つことができる『カリブル ロワイヤル』をダニ氏自身はどう捉えているのだろうか?


「ペキニエの自社製ムーブメントである『カリブル ロワイヤル』の優れた点は、第一に統合された複雑時計であること。そこには8つの特許が用いられています。そして香箱が大きく、今までの考え方を逆転させて香箱の芯の回転で動力を発生し、さまざまな制約を減らして長期間に渡って安定した精度を保証することができます。
 第二の特徴はカレンダー機構です。いわゆるビッグデイトですが3枚のディスクが段差無く並び、ディスクがジャンプして瞬時に日付が変わります。しかも修正が制約される時間もありません。
 このムーブメントの完成後、私が開発チームを指揮してGMTを加えましたが、『カリブル ロワイヤル』にこれ以上の複雑機構は加える必要がないと思っています。そこで新しいムーブメントの開発を計画しています。今のところ具体的なスケジュールはありませんが、さまざまな可能性を検討し、そこには財政的なこともありますが、市場のニーズなども考慮し、複数ある可能性の中から最良のものを選びたいと考えています」


 安定した環境で新たなるムーブメントの構想をじっくりと練り上げ、我々をアッと驚かせる新型ムーブメントを作って欲しい。それが時計愛好家の願いであり、ペキニエならやってくれる。私もその時を待ち望んでいるひとりである。

  • ダニ・ロワイエ
  • Dani ROYER
    ダニ・ロワイエ


    1981年、フランス生まれ。2004年にフランス国立メカニックマイクロテクノロジー学校を卒業後、リシュモン グループのムーブメント製造会社ヴァルフルリエに入社しムーブメント製造や品質管理等を担当。2010年、アーノルド&サンに移りプロダクト・マネージャーに就任。2012年、ブヘラAG入社し設計開発室長に就任。2014年、ペキニエに開発部門主任として入社し自社製ムーブメントの改良等を担当。2017年、社長に就任。

ROYALE SAPHIR
ロワイヤル サフィール

  2019年2月にミュンヘンで発表された新作。ムーブメントの素晴らしさをアピールするため、サファイアでダイアルを製作した特別モデル。厚さ0.1mmのサファイアガラスにメタルのプレート重ねて強度を確保。

日仏国交160年記念モデル
RUE ROYALE LIMITED EDITION
リュー ロワイヤル リミテッド エディション

  日仏交流160周年を記念して2018年に製作された限定バージョン。フランスを象徴するトリコロールカラーをあしらったモデル5作を合計160本限定生産。


リュー ロワイヤル リミテッド エディション

①2フォンクショントリコロールハンズ
Ref.9010133FJ
防水性:10気圧
ムーブメント:自動巻き、約88時間パワーリザーブ
限定:30本
価格:630,000円(税抜)


②4フォンクショントリコロールムーンフェイズ
Ref,9010433FJ
防水性:5気圧
ムーブメント:自動巻き、約88時間パワーリザーブ
限定:10本
価格:1,150,000円(税抜)


③3フォンクショントリコロールカレンダー
Ref.9010233FJ
防水性:10気圧
ムーブメント:自動巻き、約88時間パワーリザーブ
限定:40本
価格:990,000円(税抜)


④1フォンクショントリコロールハンズオンブルー
Ref.9010073FJ
防水性:10気圧
ムーブメント:自動巻き、約88時間パワーリザーブ
限定:40本
価格:580,000円(税抜)


⑤1フォンクション ハンドワインディング
Ref.9080413FJ
防水性:10気圧
ムーブメント:手巻き、約100時間パワーリザーブ
限定:40本
価格:480,000円(税抜)


共通仕様
ケース径:42.0mm
ケース素材:ステンレススティール
ストラップ:アリゲーター(①②④のストラップは撮影演出、③⑤のストラップは商品に付属)
ムーブメント:シングルバレル・センターシャフト・ドライブ、パワーリザーブ・インジケーター、フラット3ディスク・ジャンピングデイデイトカレンダー(フランス語表記)
仕様:シースルーバック


取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:江藤義典 / Photo:Yoshinori Eto

INFORMATION

ペキニエ マニュファクチュール(PEQUIGNET MANUFACTURE)についてのお問合せは・・・

カリブルヴァンテアン株式会社
〒104-0045 東京都中央区築地6丁目 4-5シティスクエア築地 8F
TEL: 03-6206-2333


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