Richard Mille Factory Tour 最先端の素材を用い 超高精度マシンと人の手から生まれる 複雑な三次元シェイプ
リシャール・ミルの場合、他社が用いない特殊な新素材を採用することが多く、その意味ではムーブメントと同様にケースの存在が極めて重要である。
まずここで用いられる素材だが、カーボンナノチューブ、マグネシウム、ATZセラミックス、NTPT®カーボンなど。これらを用いてリシャール・ミルならではの三次元デザインに切削加工が施される。
この工場には、ひとつのマシンでの切削が、一台で5回転軸から可能な、スイス最先端の5軸の工作機械が設置されている。また地板もここで加工されているが、これは両面からの切削が可能な高性能な工作機械が稼働している。
このようなマシンの場合、重要なのはコンピュータのプログラミングだという。同時に多くの作業を実現するためには、綿密なプログラミングが要求され、これに時間を費やすのである。これを完璧に行うことで、完璧なケースが生み出されるという。
現在、プロアートではケースを完全に一貫生産できる体制が整い、ブリッジと地板の機械加工が第二のステップだという。そしてさらにメタル・ブレスレットの製作もスタートしており、全体の生産量も増えていくだろうということだ。
このプロアート社で製作されたケースは、ヴァルジン社に持ち込まれ、ムーブメントを組み込んで完成へと向かう。
しかし、これで真の完成ではない。厳しいテストが待っているのだ。
まずひとつは耐久テスト。専用のケースに時計を入れ、25~50Gをかけて24時間テストする。
さらに耐衝撃テストでは、ガラス面とリューズ部分を200Gで20回、衝撃を与える。
また、5000Gの耐衝撃テストでは、1mのアームに3.5kgのハンマーを取り付け、合計重量5.5kgで時計を叩く。これによって針が飛ばず、精度の誤差が出ないことが合格の条件。これらのテストは抜き出しの場合もあるが、特に耐衝撃性が重要なラファエル・ナダル、バッバ・ワトソンのモデルなどでは出荷前に全品検査が実施される。
独創的な発想を高度な技術で具現化することで、従来の腕時計に飽き足らないコアなウォッチ・ファンの心を掴んだリシャール・ミル。その進化の早さは驚異だが、その製造工程もやはり驚きに満ちていたのである。
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5軸の工作機械の脇にセットされた切削用バイト。複雑な切削作業に合わせて、数え切れないほどのバイトが用意されている。これらのバイトはプログラムに従い、自動的に交換される。
これが5軸工作機械の全貌。脇におかれたディスプレイでプログラムの確認しながら、複雑な加工を実施する。このプログラムの善し悪しが、ケースの完成度を左右するという。
研磨の作業は部屋全体を暗くし、手元だけに明かりを当てて行われる。こうすることでコントラストが強まり、研磨した部分が明確にわかるという。
取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:高橋和幸(PACO) / Photos:Kazuyuki Takahashi(PACO)
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