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SEIKOセイコー創業140周年を記念して蘇った伝説の名機の全貌。王の帰還 05

国産時計への探究心を掻き立てた
『キングセイコー』との出会い

私が所有する1960年代に製造された『KS』各種モデル

私が所有する1960年代に製造された『KS』各種モデル。これらの他に、『KS』のベースとなった『クロノス』なども所有しているが、実際に身につけて楽しんでいるのは『KSK』が一番かもしれない。

 私が最初に『KS』の存在を知ったのは、たしか1980年代の初めごろ。小学生時代からの同級生で、一緒に掘り出し物探しをしていた友人から「かつてセイコーには『グランドセイコー(GS)』と『キングセイコー(KS)』というふたつの高級品シリーズがあったんだって」と聞いたことだったと記憶する。おそらく友人はこの情報をひとりで訪ねた時計屋の親父さんにでも聞いたに違いない。

 というのも当時、時計の人気はスイス製の某ブランドに集中しており、雑誌の記事もそちらが中心。国産時計の情報はまともに取り上げられず、情報を得るには時計屋の店主に聞くぐらいしかなかったのだ。

 ちなみにある程度まともな国産時計の情報が紹介されたのはワールドフォトプレスから1994年に発行された『国産時計博物館』というムックがほぼ最初だったはず。

 なにしろ最初に手に入れたアンティーク時計がセイコーが1955年に発売した『ユニーク』だった私は国産時計への思い入れが強く、アンティーク店や蚤の市などを回っては気になるモデルを手に入れていた。

 そんな中で出会ったのが、今回復刻された『KSK』のオリジナル。入手したのは東京郊外の駅のそばにあった小さな時計店で、裏のメダリオンと秒針停止装置の部品が失われていたため格安だったので購入を決意した。

 その後、『KS』の初代モデルや36,000振動/秒のハイビート・モデルなども入手したが、特にレアだと思うのは1968年に設立された「日本クロノメーター検定協会」の公式検定に合格し“CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED(公認クロノメーター)”とダイアルに記されたモデルだ。残念なことに「日本クロノメーター検定協会」はクォーツ時計の出現によって存在意義を失い1984年に解散したという。

 今後、セイコーが『KS』を定番シリーズ化するかどうかは現在のところ不明である。しかし、いち時計ファンとしては『GS』と並んで輝かしい歴史を持つ『KS』の伝統を一度限りの復刻モデルで終わらせるのは、あまりにも惜しい。できることなら、これを契機に新たな『KS』の伝統を創生していって欲しい。素直にそう思うのである。


『キングセイコー』をより深く知るなら
トンボ出版の国産腕時計シリーズ


 国産時計の人気と認知度は以前より増しているとはいえ、スイスに追いつき追い越せとがむしゃらに開発を進めた1950~70年代の歴史的経緯については雑誌やウェブで取り上げられることは少なく、体系的な情報を得ることが難しい。そんな中、1994年に発行された「戦後の国産腕時計 セイコー/タカノ」(長尾善夫・木村好孝著)から始まったトンボ出版の時計の本シリーズには、国産時計ファンにとってのバイブルともいうべき好著がそろっている。残念ながらその多くがすでに絶版・品切れだが、まだ入手可能なものもあるのでチェックしてみていただきたい。

 特に『KS』初期の手巻きモデルについては「国産腕時計シリーズ3 セイコー クロノス」が、後期の自動巻きモデルについては「国産腕時計シリーズ9 セイコー 自動巻2」(いずれも絶版)に詳しく紹介されているので機会があればご一読をお勧めする。

 なおトンボ出版の時計の本についての情報は下記のサイトを参照していただきたい。

www.tombow-shuppan.co.jp/tokei.htm



協力:セイコーウオッチ株式会社 / Special thanks to:Seiko Watch Corporation

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