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Gressive Impression時計ブランドとそのメセナ活動とは?第1回 リシャール・ミル(Part.2)

Part.2
観て楽しむだけではなく五感で感じられる
リシャール・ミル協賛イベントの世界

「鈴鹿サウンド・オブ・エンジン」のスタート前、パドックウォーク

「鈴鹿サウンド・オブ・エンジン」のスタート前、パドックウォークにて。リシャール・ミルが持ち込んだフェラーリ312Tは、1975年のF1でフェラーリのコンストラクターズ・タイトル獲得に貢献した名車だ。

  リシャール・ミルがサポートするヒストリックカー・イベントは、季節柄が巧みに組み合わされている。寒い時期はインドアに出展、初夏は公道ラリー、2年に1度は盛夏にル・マンのフルコースを使い、初秋の気配漂う頃にはコンクール・デレガンスとピクニック・イベント、そして晩秋は鈴鹿という年間スケジュールだ。


  こうしたクルマが走る様子とは、視界の中を横切っていくだけではない。エンジンの音やそれこそ機械同士が擦れ合う音、ガソリンやオイルの焼ける匂いまで、五感を使って楽しむ類のスペクタクルであることを付記しておく。


  各イベントの概要は以下のとおりだ。


【2月】Rétromobile / レトロモビル


  毎年2月初旬にパリ、ポルト・ドゥ・ヴェルサイユの見本市会場で開催される「レトロモビル」。欧州で最大規模のインドア・ヒストリックカー・ミーティングだ。旧車が集まるだけでなく、世にも珍しい実験的なクルマや忘れ去られかけていた希少車、あるいは歴史的に貴重なクルマが、再び桧舞台に上がる機会として知られる。主催者のキュレーションによるテーマ展示や、欧州の自動車博物館の出張展示も大きな見所だ。


  他のイベントのような冠スポンサーでこそないが、今年(2017年)よりリシャール・ミルはメインホールにブースを構え、自らのコレクションから6台も希少なF1カーを展示。そのうち2台は6輪車、1台は4輪駆動車(1969年式コスワースF1 4WD)という内容からして、彼の恐るべきマニア目線と鑑識眼が窺い知れるだろう。

  加えて「レトロモビル」はミニカーやクルマ関連の書籍、ポスターなどのアウトモビリア関連、パーツや工具のスワップミートが盛んなことでも知られ、コーギーなど入手困難なヴィンテージ・ミニカーなどを求め、近年は日本から足を運ぶエンスージアストも多い。2017年はすでに終了したが、2018年は2月7~11日開催がアナウンスされている。
www.retromobile.com


【5月末-6月】Rallye des Princesses / ラリー・デ・プランセス


  ドライバーもナビゲーターも女性のみ、パリのヴァンドーム広場からフランス東部のカントリーロードやアルプスの峠道を越え、南仏のサン・トロペのゴールまで、総長は1600kmに及ぶ。2017年は5月27日から6月1日に開催予定だ。


  主催者は17年前、ラリー・イベントで女性がつねに男性のサポート役に回り、不遇を囲っていることに気づいたという。男女間の不平等是正というロジックもあるが、仕事や家庭から開放され、女性ふたりで美味しい食事と素敵なホテルを巡りながら旧いクルマで旅する、そんなラリーを提案した。今では90組近くが参加し、キャンセル待ちができる人気イベントに。エントラントの大半がリピーターで、最初は夫や父親の趣味グルマを借りて出走したが、翌年からは自らヒストリックカーを購入して出るパターンが多いとか。
www.zaniroli.com/rallye-des-princesses/

【7月】Le Mans Classic / ル・マン・クラシック


  2002年の初回からリシャール・ミルが協賛する「ル・マン・クラシック」。隔年開催で、西暦偶数年の7月初旬の週末にル・マンのサルト・サーキット、本番の24時間レース同様のフルコースで開催される。第1回の観客動員数は3万人弱だったが、2016年の第8回は14万人近くを数えた。次回2018年は7月6~8日に開催される。


  参加車両はすべて、歴代のル・マン24時間に出走したことあるモデル。戦前から90年代初頭のグループCカーまで、年代ごとに7つのクラスに分かれる。各クラスのレースは、土曜から日曜の24時間の内に1時間×3セッションを競う。旧いクルマでル・マンの13km超のコースを攻めるのは簡単ではないが、フェラーリ250GTOやポルシェ917のような往年の名車が、全開のエキゾーストを響かせ、地鳴りを伴って目の前を過ぎていく様は、エンスージャストには究極のスペクタクルといえる。


  リシャール・ミル氏は「ル・マン・クラシック」では自らのクルマをエントリーさせ続けているが、近年は友人らにステアリングを任せることも。一方ではピット上のロッジや、コース南のゴルフクラブを貸し切ってバーベキューを催し、往年の名ドライバーや自動車界の名士が多数やって来るような、優雅なパーティを主宰している。
www.lemansclassic.com/

【9月初旬】Chantilly Arts et Elegance Richard Mille / シャンティイ・アール・エ・エレガンス・リシャール・ミル


「ル・マン・クラシック」と同じく、主催はピーター・オート、冠スポンサーはリシャール・ミルで2014年より開催。毎年9月1週目の日曜日、パリの北50kmにあるドメーヌ・ドゥ・シャンティイというシャトーで行われるコンクール・デレガンスだ。「カントリーサイドでの優雅な日曜」というテーマで、ドレスコードは「スポーツ・シック」。普段は庭で食事禁止のシャトーで優雅なピクニックに興じられる点も評判で、2016年は第3回目開催にして11万5000人が集まった。


  とはいえメインのプログラムは、クルマのレストアの出来映えとオリジナル性を競うコンクール。これまで自動車のコンクール・デレガンスといえばアメリカのぺブルビーチが有名だったが、その大会委員長をシャンティイは審査員チームに迎え、他にも欧州各国からエキスパートを集めるなど国際化を図っている。

  それにしても、ヴェルサイユ宮殿の庭園と同じくル・ノートルが設計した幾何学的なフランス式庭園の芝に、アールデコ期の流線型ボディや戦前の超高級車、さらには’60年代のレーシングカーはよく似合う。美しいクルマを美しいロケーションで鑑賞できる、世界でも指折りの機会といえる。広大なドメーヌは、フランスのブルボン王家の従弟筋にあたるコンデ公の元居城で、シャトー内にはコンデ家のルネサンス期以来の絵画コレクションをもつ、ミュゼ・コンデもあり、007映画の舞台に使われたこともある。


  また毎年のお約束として、クルマだけでなく馬術ショーが組み込まれている。2016年はフランス文化省の後援もあって、ギャルド・レピュブリカン、つまり大統領親衛隊が軍隊式の馬術を披露した。

  リシャール・ミルは毎年、’60~’70年代のマクラーレンのF1マシンやフェラーリ、ポルシェのスポーツプロトなどを出展し、コンクールの一角を盛り上げている他、商談も可能な優雅なサロンを構え、VIPや顧客といったファミリーを迎えている。
www.chantillyartsetelegance.com/


【11月】Suzuka Sound of Engine / 鈴鹿サウンド・オブ・エンジン


  鈴鹿サーキットランドが2015年より開催しているイベントで、リシャール・ミルは昨年2016年より冠スポンサーとなった。元々は、サーキットの落成50周年を記念したイベントで、鈴鹿を舞台に活躍した旧いクルマやバイクを走らせたところ、参加者、観客とも好評で、定期イベントとしてレギュラー化された。2017年は11月18~19日の開催が決定している。


  '60年代の日本グランプリ黎明期の国産メーカーのワークスカーや、'70~'80年代を中心とする往年のF1マシン、そして'90年前後の1000馬力・最高速400㎞/h級のグループCカーらが、模擬レースの枠組みながら、世界屈指のテクニカルコース鈴鹿を再び全開で走るのだ。しかもドライブするのは鮒子田寛や砂子義一、星野一義や中島悟、寺田陽次郎らといった、現役当時と同じ日本を代表するレジェンド・ドライバーたち。そしてコース上では、GT-R伝説の元になったプリンス・スカイラインS54Bや日本車で唯一ル・マン24時間を制したマツダ787Bらが、快音を響かせた。

  リシャール・ミルはヴィンテージF1のクラスに、自ら持ち込んだフェラーリ312Tで出走し、初めて走る鈴鹿にも関わらず果敢な走りを披露し、コース慣れしている葉巻型フォーミュラ・クラスのジェントルマン・ドライバーたちを唸らせていた。
www.suzukacircuit.jp/

取材・文、写真:南陽一浩 / Report & Text,Photos:Kazuhiro Nanyo


南陽一浩(なんよう・かずひろ)
自動車、メンズ・ファッション、旅行などの分野を取材するフリーランス・ライター歴21年。うち13年をフランスで過ごし、2014年から東京に拠点を戻しつつも、毎月のように渡航と取材に出かけている。近年の主な寄稿先は、『カー・マガジン』、『ザ・レイク日本版』、『メルセデス・マガジン』、『クレア・トラベラー』、仏『ムッシュー』誌など。執筆や撮影以外に、美術展のコーディネイトや、自動車や時計メーカーの日仏通訳も手がけている。



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〒104-0061 東京都中央区銀座 8-4-2
TEL:03-5537-6688
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