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FRANCK MULLER東洋思想を取り入れた画期的な「インペリアル トゥールビヨン」

東洋思想を取り入れた
画期的な「インペリアル トゥールビヨン」

2000年代初頭に描かれた「トゥールビヨン」のイラスト

2000年代初頭に描かれた「トゥールビヨン」のイラスト。独特のケース・フォルムやトゥールビヨン・キャリッジの状態がわかる。

  フランク ミュラーのトゥールビヨン製作において、ひとつの節目となった作品が1995年春に発表された「インペリアル トゥールビヨン」である。


  このモデルは、6時位置にトゥールビヨンをセットした大型のトノウ・カーベックスのモデルだが、トゥールビヨンのキャリッジを鋭く磨き上げ、これによって邪悪なものを払うという独自のコンセプトが取り入れられている。


  当時、このコンセプトについてフランク ミュラーは「これは東洋思想に影響されたもので、中国の友人から教えられた」と熱く語った。また、トゥールビヨンのケージに取り付けられた秒針は一般に“サーペンタイン・ハンド”と呼ばれるスタイルで、これはもともと蛇を象徴したものだが、フランク ミュラーはこの秒針を“炎の表現”と語っていた。


  このようにトゥールビヨンというメカニズムに独特な哲学を持ち込んだことは実に画期的だった。それまで機能の複雑さや多さだけを競っていた複雑時計にとって、思想性を導入したのはフランク ミュラーが行った革命のひとつである。


  そこで先頃、来日したフランク ミュラーに「インペリアル トゥールビヨン」に込めた思いを再確認したところ、彼はこう答えた。


「これはかつてスイスから中国に販売された“チャイニーズ・デュプレックス”と呼ばれた懐中時計がヒントなんだ。この時計は必ず二個セットで販売されたが、テンプには鋭い刃が付いていて、これで邪を切り払うという思いが込められていたんだよ」


  フランク ミュラーの言うとおり、資料をあたったところ、19世紀、中国向けにスイスで製造されたチャイニーズ・デュプレックスには、テンプにフチを鋭く研ぎ上げたアックス(斧)形のバランス・ウェイトを取り付けたものが存在する。そこに中国の人は“邪を切り払う”という思いを込め、スイスにオーダーしたのかもしれない。


「ただ、時計に哲学的な思想を持ち込んだのは決して“インペリアル トゥールビヨン”が最初ではない。その前に私はレトログラード・セコンドを実現した。これは“時は巡るのではなく、一度過ぎると取り返すことができない”という思いが込められているんだ」


  フランク ミュラーが実現したレトログラード・セコンドとは、秒針が回転するのではなく、扇状の目盛りを60秒まで進み、終点に到達すると瞬時にゼロに復帰して、再び秒を刻むという機構。“レトログラード”とは“後退”や“逆行”といった意味だが、従来、一部の変わり種時計に見られた機構だったものを、独自の思想を込めて高級時計に採用したのはフランク ミュラーが最初。これには後に、個性的な表示システムのスタンダードとなっていった。


取材・文:名畑政治 / Report&Text:Masaharu Nabata
写真:江藤義典 / Photos:Yoshinori Eto(25周年記念インタビューを除く)


フランク ミュラー(FRANCK MULLER) についてのお問合せは……
フランク ミュラー ウォッチランド東京
東京都中央区銀座5-11-14
TEL:03-3549-1949
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